絵を描くこと。

カズオオモリ/イラストレーター
唯一無二の日本人ディズニーオフィシャルアーティスト

再開発が進み「あべのキューズタウン」などの商業施設により近代的なイメージに変貌した、大阪天王寺駅を出発。
チンチン電車に揺られ、変わりゆく大阪を眺めながら約10分。
閑静な住宅街の一角にある昭和レトロなマンションに、私たち取材陣はワクワクしながら、1人の世界的アーティストを尋ねた。 日本人で唯一無二、ウォルト・ディズニー・カンパニー契約アーティスト「カズオオモリ(以降カズさん)」にお話を伺うためだ。

夢を追いかけミネアポリスで過ごした6年間

美大を卒業後、日本のイラストレータープロダクションに就職。その後、夢を追いかけて23歳で退職し渡米する。 「アメリカに行けば何とかなる!」そう思って、日本で繋がったネットワークを断ち切って渡米したものの、英語もほとんど話せず、 仕事をもらえずの生活が続き、「甘いもんじゃなっかった・・・」と当時を振り返るカズさん。
しかし、オリジナルのイラストスタイルを確立するため、アート系の大学に通いながら現地のネットワークを着実に築き始める。 そして、日本での経験から様々なタッチを描けることを見込まれて、絵コンテからパース、スケッチ、 スーパーのチラシのキャベツなど幅広いイラストの仕事を紹介してもらいアメリカでのキャリアを積み上げていく。
イラストレーターとして今の画風に近いものを作り上げ、アメリカから日本中のデザインプロダクションへ作品を送り続け(送りまくって)ていたという。
一つだけ今でも心残りがあるそうだ。それは、憧れのグラフィックデザイナー、チャールズ・S・アンダーソン氏に会いたかったのに会えなかったこと! 今なら絶対に会う方向に持っていってた!と力強く語られていたのは印象的でした。

幼少期からの憧れていた、映画の世界へ

ジョージルーカスやスピルバーグに憧れて「映画の世界に入りたい」と思い続けていたカズさん。
仕事の合間に時間を見つけては、映画関連の『ファンアート』を描きオリジナルwebサイトで紹介し続けた。
『ファンアート』とは、他者が創作したキャラクターやストーリーなどを元にした作品で、基本的には報酬を得てない商業的ではない作品の事。
そんなある日、フランスの『Geek-Art.net(ギークアートネット)』というポスターアートサイトの目に留まり、 アメコミダークヒーロー『Hellboy(ヘルボーイ)』の映画ポスターアートを描いてみないかとの依頼が舞い込む。 夢であった映画の世界。断る理由は何もない。自分の全てを注ぎ込んだ作品が『Geek-Art.net(ギークアートネット)』 にて販売されはじめ世界中の映画ファン、アートファンの目にとまることになり、続いて『エイリアンシリーズ』などのポスターアート作品も手掛けるようになる。
その活動を見たアメリカのエージェント『Poster Posse(ポスターポッセ)』からオファーを受けディスニー、スターウォーズなど数々の作品を手掛ける。 そんな中、映画『ベイマックス』用の作品で、記者会見用ポスターも含め全作品が採用され、その事をきっかけにディズニー専属のアーティストに、その後ウォルト・ディズニー・カンパニーから直接契約の打診があり今に至る。
幼い頃から映画を見て、映画の世界に入り込むために『ミッキー』や『ピノキオ』の絵を時間を忘れて書き続けていた、カズさん。
本格的に絵を習い始めた切っ掛けは、親戚のお家に遊びに行った時の事。当時、工業高校に通われていた叔父さんの部屋に貼ってあった『コカ・コーラ』のタイポグラフィーを見て「めっちゃカッコイイ!!」と人生が変わる衝撃を受けてしまった。それは、ポスターカラーで描かれた叔父さんの手描きのロゴで、学校の課題で制作したものだという。そこで、タイポグラフィの美しさや手書きの印刷物とは違った味わいを感じとり、叔父さんと語り合ったという。

絵を描く行為は自分の居場所

しんどい事つらい事があったら絵に逃げる事ができる(笑)、自分の世界に入り込むんそれで自分を落ち着かせてくれる、 そして描くことを続けていくことで特技になっていく、絵を描くことで自分が作り出した空想の世界に入り込める。 絵を描き続けている理由はたくさんあった。
絵を描くことはゲームの世界とは違い、クリエイションを生むという。
「ゲームの世界は誰かに作られた世界、誰かが作り与えられた世界に身を置くだけでは、クリエイションは生まれない」 スマホやタブレットの様な限られたスペースでは無く、白紙のキャンバスに無限に「自由」に書くことが大切だと。

今と昔では絵を描く環境が変わった

美術大学で教鞭を執るカズさんは、近頃の生徒達の姿勢に驚きを隠せないらしい。
以前は、それまで絵を描くことが好きだという子が美術大学に入学していたと思う。が、今は「ココで学べば絵が描けるようになりますか?」と生徒達から質問があるらしい。
絵が好きで絵がある程度描ける生徒が、更にスキルアップし絵をベースに将来の事を考えたいと勉強に来るのではなく、絵が描けない生徒が絵を描けるようになるために通う。

「今の子供達は自分達の頃と比べると絵を描く時間や環境が減ってきていますね」
現在は絵画の授業時間はプログラミングやPCの授業に取って代わり、自宅での遊び方はお絵描きよりもスマホやゲームになり、絵を描く時間や環境は少なくなってきている。

家庭にもよるが絵を描く環境が無くなってきているからこそ、本企画のクリエイティブボックスが必要で需要があると良い後押しをいただいた。
「いいですね、このボックスお絵描きキットがあるだけで空想の世界に入れる!」

新しい企画のヒントも!?

今回の黄色いバッグについての話も広がった。
普段、絵を描かない人にはいきなり絵具と筆を使って絵を描くってことはハードルが高いと感じる人もいるかもしれない。絵具を使うことで「ちゃんと書かなあかん」って構えてしまう人もいるのではないかと。
次のセットは、もう少し気軽に簡単に絵を描く事にチャレンジできるアイテムもあっても良いんじゃないかな~と、ヒントになるような助言もいただいた。
近い将来カズさん監修の『KAZスペシャルキット』を展開することを想像して、私は思わずニヤリ。

そして、絵に対する想いは、企画した私は負けないつもりでいたが、圧倒されるほどの熱い想いを感じた。

初めに感じたワクワク以上に楽しく、カズさんとの時間は驚くほど早い。
余韻に浸りながらカズさんに見送られ、スタッフと帰りのチンチン電車に乗った。
顔を合わせて思わず2人共、同じ言葉が出た。
「あぁ~絵が描きたくなった」